2週間経って、Anthropicが公式に直したのは6件中1件でした。
それでも、業務は1日も止まっていません。
前号(2026-07-14)で、AI本体で起きる見えない障害モード3つと、それを外側で受け止めるための受け皿3つ(バックアップ/安全装置の実機確認/使用量の定点観測)の話をしました。「AIを直すんじゃない、外側に受け皿を作るんです」で締めた回です。
あの副資料に載せた GitHub Issue 6件を、2週間後の今日、もう一度全部見直しました。OPENのままが5件、CLOSEDに変わったのは1件。つまり、公式修正待ちの姿勢だった1人型起業家は、この2週間、ほぼ何も守られていなかったわけです。
一方で、受け皿を先に作ってあった側は、事故が起きても「あ、受け皿が仕事したな」で終わっている。この対比を、実物のログで見せます。
前号で引いた GitHub Issue 6件、それぞれの状態を 2026-07-28 時点で全部見直しました。
| Issue番号 | 状態(2026-07-28 時点) | 中身(要旨) |
|---|---|---|
| #62041 | CLOSED(2026-07-16) | 起動時のお掃除処理でセッション書き起こしが2,300件一度に消える件。唯一、この2週間で直った案件。 |
| #77268 | OPEN | 作業用の隔離フォルダ(worktree)が、他の生きているセッションのworktreeを含めて5回破壊された件。ロック済みも未コミットも巻き添え。 |
| #75275 | OPEN | Windowsのお掃除処理がNTFSのフォルダ参照(junction)を辿って、隔離フォルダの外側の約800GBまで消してしまう件。 |
| #77212 | OPEN | 「実行前に必ず聞く」と設定した安全装置(hook)が、権限バイパスモードの下では黙って承認されてしまう件。「拒否」を返すhookは正しく動く。 |
| #72960 | OPEN | AI本体が dangerouslyDisableSandbox: true(隔離環境を無効化する設定)を有効にしても、ユーザー側には何の表示も出ない件。 |
| #76147 | OPEN | 会話全体の使用率にまだ余裕がある段階で、文脈圧縮が数分内に何度も連続で走ってしまう件。圧縮のたびに課金される。 |
gh issue view --json state,closedAt で直接照会した結果。CLOSED は #62041 の1件のみで、他5件は OPEN のまま更新日付だけが動いている状態です。「議論はしている、まだ直っていない」。
前号で書いた1つ目の受け皿は「業務データをAIツール本体の中に置きっぱなしにしない」でした。外側(Google Drive/GitHub/Notion)に必ず本体を置いておく。
これ、頭では「そりゃそうだよね」って話なんですよ。じゃあ、実際にやってあるかどうか。ここが分かれ道です。
実際に回っていた記録(過去14日間)git log --since="2026-07-14" --grep="auto-backup" --oneline | wc -l
受け皿を作る作業って、作った瞬間には何の見返りもないんですよ。1時間ごとに勝手にバックアップ走らせても、その日何も起きなければ「無駄骨」に見える。
ただ、これは保険と同じ構造なんです。無駄骨に見える期間は、実は「事故が起きていない期間」であって、これがまさに投資が回っている状態です。逆に「1回も発動しなかったから保険はいらなかった」と解約する人は、次に事故が起きたときに全損する。
この2週間、うちはAnthropic側で誰がどんなバグを踏んでいても、業務側は影響ゼロで通しました。それは「作ってあったから」であって、「運が良かったから」じゃない。
Google Drive/GitHub/Notion のどれか1つでもいい。AIツール本体の外側に、業務データの一次コピーを置いてある状態を今日中に作ってください。「作った」で終わらせず、「1時間おきに動く」を仕込んで、動いた回数を月末に数える。数えた数字が受け皿の証拠です。
前号で書いた2つ目の受け皿は「安全装置(hook)を設定したら、必ず実機テストする」でした。わざと危険操作を試して、止まるか確認する。
ここ、多くの1人型起業家がやらないまま終わっている領域なんですよ。「設定は書いた、書いたから安心」で終わってしまう。書くのは頭の仕事、発火確認は手の仕事。ここが分離してるから、忘れる。
Anthropic側で今も直っていない話(issue #77212)hook は「AIを止めるための装置」です。装置が正しく動くかどうかは、装置を書いた瞬間には確認できません。動かして初めてわかる。
これ、車のブレーキと同じなんですよ。買った直後にちゃんと停まるか一度踏んで確認する人はいる。買ってから何ヶ月も踏まないで、いざ交差点で踏んで停まらなかった、が最悪の事故です。
この2週間で #77212 のバグを踏んで大事故になった人がいるとしたら、それは「hookを書いた瞬間に安心してしまい、実機で発火確認をしなかった人」です。装置は書けば動く、じゃないんですよ。動かして初めて動くとわかる。
hook を書いたら、その日中に「わざと発火させるテスト」を1本セットで回す。発火しない hook は書いてないのと同じ扱い。バイパスモードは常用しない。この3つが揃っていれば、Anthropic側の #77212 バグが直る前でも、業務は止まりません。
前号で書いた3つ目の受け皿は「週1回、AIサービスの使用量ダッシュボードを見る癖」でした。月次予算の上限アラートも合わせて仕込む。
これ、地味なんですよ。派手さゼロ。でも、この2週間で一番効いた受け皿がこれでした。理由を書きます。
Anthropic側で今も直っていない話(issue #76147)①のバックアップは、事故が起きた時に「業務が止まらない」を守る受け皿。
②の実機テストは、事故が起きる前に「装置が仕事してる」を確認する受け皿。
③の定点観測は、事故が起きている最中に「まだ小さいうちに気づく」ための受け皿です。
気づくのが月末になると、事故は1ヶ月分に育っています。気づくのが週次になると、事故は1週間分で頭打ち。同じバグを踏んでも、被害の大きさが1/4になる。
大事なのは「見た結果を分析する」じゃなくて「見る癖そのもの」です。分析は異常があった時だけでいい。異常がない週は3〜4分で終わる。癖にしてしまえば負担にならない。
週1回、決まった曜日に、AIサービスの使用量ダッシュボードを開く。予算アラートを月次予算の80%到達で設定する。この2つだけで、#76147のような請求ショック系のバグは「翌週気づく」に前倒しできます。翌月まで気づかない状態を、意図的に潰す。
前号(2026-07-14)で「AIを直すんじゃない。外側に受け皿を作る」の話をして、3つの受け皿を提示しました。
今号は、それから2週間、その受け皿が実際に仕事をした記録です。Anthropicが直したのは6件中1件。それでも業務が止まらなかったのは、受け皿が2週間、ちゃんと回っていたからです。
1時間ごとに動くバックアップ。書いたその日に発火確認をする hook。週1で開く使用量ダッシュボード。どれも派手さゼロです。派手じゃないから、後回しにされる。後回しにされると、事故が起きたときに何もない状態から慌てることになる。
この副資料を読んだあなたにお願いしたいのは、大きな仕組みを組むことじゃないんですよ。「今日1つ、受け皿を1つ動かす」。これだけです。
この3つを「今日中に1つ、今週中に3つ」で動かせば、次にAnthropic側で何が起きても、あなたの業務側では「あ、受け皿が仕事したな」で終わります。