6つのAI癖を直しても、これは防げないんですよ。
前号(2026-07-11)でAIエージェントの「6つの慢性癖」と、それを封じる「3層の消えない容器」の話をしました。ただ、そこでは扱わなかった層があるんです。
AI本体(ツール自体)が、あなたに何も言わずに勝手にやること。ここで起きる事故はプロンプトの書き方でも、AIに指示の出し方を工夫しても、6つの癖を全部封じても、防げません。あなたが操作していない層で起きるからです。
2026年に入って実際に世界中で報告された3つの障害モードを、Session 3-4 の副資料として整理しました。あなたが今のうちに「これは知ってる」の状態にしておいてください。
AIエージェントに何かを指示しました、というのが「あなたが操作した層」。それに対して指示していないのに、ツール本体が裏で勝手に動く処理があります。作業ディレクトリのお掃除(garbage collection)、ツール自身のアップデート、内部データベースの形式変換、といった処理です。
これらは作業画面に一切表示されません。「削除しました」も「バックアップしました」も出ない。それどころか、AIとの会話履歴にも残らない。「気づいたら消えていた」という起こり方をします。
実際に起きた事例(原文引用)これらは全部、AIエージェントが「よし、削除しよう」と判断して実行したことじゃないんです。ツール本体(Claude Code というアプリ)自身が、裏側で自動的に走らせている「お掃除の仕組み」がやっています。
だから「AIに『消していい?』と聞かせる」「6つの癖のチェックをする」「hookで確認を挟む」——これらの対策は全部届かないんです。AIは何もしていないから、AIを直しても何も変わらない。あなたの側の運用でしか、防ぎようがない。
AIエージェントを運用するとき、「これをやる前に必ず聞いてね」というブレーキ(hook・フック)を仕込みます。危険な削除・書き込み・送信の前に、ユーザーに一度確認を取らせる仕組み。The Innovation でも Session 3-4 で扱います。
ただ、その安全装置自体がバグを持っていて、「聞くはず」の場面で聞かずに黙って承認してしまうことがあります。設定は正しく書いてある。それでも動かない。
実際に起きた事例(原文引用)dangerouslyDisableSandbox
hookは「AIを止めるための仕組み」です。AI本体が悪さをしても、hookが「待って」と割り込む。だからhookを仕込んでいれば安心——という前提が崩れる話です。
hookが実装バグで動いていないと、AIが従順であるほど危ない。「大丈夫、hook が止めてくれるはず」の思い込みで、AIに広い権限を渡してしまうからです。
AIとの会話が長くなると、内部で「文脈の圧縮(compaction)」という処理が走ります。過去のやり取りを要約して、短くまとめて保持する仕組み。これ自体は普通のことです。
ただ、この圧縮が異常な頻度で発火するバグがあります。本来は会話全体の使用率が高くなってから走る処理が、まだ余裕がある段階で連続で走る。しかも圧縮のたびに課金される。気づいたときには請求が跳ねている、という起こり方をします。
実際に起きた事例(原文引用)これはAIが「圧縮しよう」と判断しているわけじゃありません。ツール本体の圧縮判定ロジックが、閾値の計算バグで過剰に発火してしまっている。あなたのプロンプトの書き方に関係なく、AIに何を頼んだかにも関係なく、起きます。
気づく側の負担が大きいのがこの障害モードの厄介なところ。使っている最中は「ちょっと遅いな」以外の症状がない。翌月の請求書で初めて気づく。
Session 3-4 でメインに扱うのは「AIエージェントの6つの慢性癖と、それを封じる3層の消えない容器」です。ここはAIとの向き合い方の話。
今回の副資料はその外側の話です。AIが何もしていない層で起きる事故があって、そこは「AIを賢く使う」という発想では届かない。
受け皿の中身は3つだけ。
この3つが揃っていれば、今回の3障害モードのどれが起きても、事業が止まる規模には広がりません。あとは Session 3-4 でメインの「AI癖対策」と組み合わせれば、AIエージェント経営の下地は整います。