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SESSION 3-4 副資料

AIツール本体の見えない障害モード3つ
— あなたの操作ミスじゃない層で起きること

発行: 2026-07-14 / 対象: BE-02 AIエージェント経営 2ヶ月グルコン メンバー
関連: 2026-07-11 AI社員の6つのAI癖と3層の消えない容器 の続編副資料

結論先頭

6つのAI癖を直しても、これは防げないんですよ。

前号(2026-07-11)でAIエージェントの「6つの慢性癖」と、それを封じる「3層の消えない容器」の話をしました。ただ、そこでは扱わなかった層があるんです。

AI本体(ツール自体)が、あなたに何も言わずに勝手にやること。ここで起きる事故はプロンプトの書き方でも、AIに指示の出し方を工夫しても、6つの癖を全部封じても、防げません。あなたが操作していない層で起きるからです。

2026年に入って実際に世界中で報告された3つの障害モードを、Session 3-4 の副資料として整理しました。あなたが今のうちに「これは知ってる」の状態にしておいてください。

障害モード ①
ツール本体の自動お掃除でデータが消える
⚠️ あなたの操作の外側で起きる
作業履歴が数千件・数百GBの単位で予告なく消える事例が複数件。
障害モード ②
安全装置(hook)自体のバグですり抜ける
⚠️ 「守ってるはず」が守っていない
「実行前に確認しますね」と設定したのに、条件次第で黙って承認される。
障害モード ③
セッション内部の異常圧縮で請求が跳ねる
⚠️ 気づく前に高額請求
短時間に何度も「文脈圧縮」が走ると、その分課金される事例。

障害モード① ツール本体の自動お掃除でデータが消える

CASE 01

あなたが何も指示していないのに、AIツール本体のバックグラウンド処理でデータが消える

AIエージェントに何かを指示しました、というのが「あなたが操作した層」。それに対して指示していないのに、ツール本体が裏で勝手に動く処理があります。作業ディレクトリのお掃除(garbage collection)、ツール自身のアップデート、内部データベースの形式変換、といった処理です。

これらは作業画面に一切表示されません。「削除しました」も「バックアップしました」も出ない。それどころか、AIとの会話履歴にも残らない。「気づいたら消えていた」という起こり方をします。

実際に起きた事例(原文引用)
「作業用の隔離フォルダ(worktree)が、5回、破壊された」
"destroyed five times" 出典: GitHub Issues - claude-code #77268
「作業関連のお掃除機能が、約800GBのフォルダ参照(junction)を消してしまった」
"~800 GB / harness housekeeping" 出典: GitHub Issues - claude-code #75275
「セッション書き起こしが、2,300件、一度に静かに消えた」
"silently deleted every session transcript"(約2,300件) 出典: GitHub Issues - claude-code #62041
なぜ「AIの癖」を直しても防げないのか

これらは全部、AIエージェントが「よし、削除しよう」と判断して実行したことじゃないんです。ツール本体(Claude Code というアプリ)自身が、裏側で自動的に走らせている「お掃除の仕組み」がやっています。

だから「AIに『消していい?』と聞かせる」「6つの癖のチェックをする」「hookで確認を挟む」——これらの対策は全部届かないんです。AIは何もしていないから、AIを直しても何も変わらない。あなたの側の運用でしか、防ぎようがない。

✅ 1人型起業家の自己対処法
  • 業務データをAIツール本体の中に置きっぱなしにしない。Google Drive・GitHub・Notion のような「AIツールの外」に必ず本体を持つ。
  • 大事なファイルは週1で外部バックアップ。特に「あの相談履歴、あとで見返そう」と思っているログ類。
  • AIツール自体のアップデート直後は要注意。データ形式が変わって不整合を起こす事例が多い。アップデート前に一度エクスポートしておく。
  • 「ツール本体で運用してる」と気づいたら、外側に一次コピーを退避。ツール本体は「作業場」であって「保管庫」ではない。

障害モード② 安全装置(hook)自体のバグですり抜ける

CASE 02

「実行前に必ず確認する」と設定した安全装置が、実装バグで機能していない

AIエージェントを運用するとき、「これをやる前に必ず聞いてね」というブレーキ(hook・フック)を仕込みます。危険な削除・書き込み・送信の前に、ユーザーに一度確認を取らせる仕組み。The Innovation でも Session 3-4 で扱います。

ただ、その安全装置自体がバグを持っていて、「聞くはず」の場面で聞かずに黙って承認してしまうことがあります。設定は正しく書いてある。それでも動かない。

実際に起きた事例(原文引用)
「hookが『ask(ユーザーに聞く)』を返しているのに、権限バイパスモードの下では黙って承認されてしまう。
兄弟のhookが『deny(拒否)』を返すのは正しく動く」
"sibling hook emitting deny works" 出典: GitHub Issues - claude-code #77212
「サンドボックス(隔離環境)を無効化する設定が、公式ドキュメントに明記されていない状態で存在していた」 出典: GitHub Issues - claude-code #72960 - dangerouslyDisableSandbox
なぜ「AIの癖」を直しても防げないのか

hookは「AIを止めるための仕組み」です。AI本体が悪さをしても、hookが「待って」と割り込む。だからhookを仕込んでいれば安心——という前提が崩れる話です。

hookが実装バグで動いていないと、AIが従順であるほど危ない。「大丈夫、hook が止めてくれるはず」の思い込みで、AIに広い権限を渡してしまうからです。

✅ 1人型起業家の自己対処法
  • hookを設定したら、必ず「本当に発火するか」の実機テストをする。「設定したから安心」で終わらない。わざと危険操作を試して、止まるか確認する。
  • 安全装置は多層に持つ。hook 一枚に頼らない。ツール側の権限設定(bypass を使わない)・OS 側の権限(ファイル書込許可)・バックアップ、と3層。
  • アップデート直後は hook が壊れやすい。実装が変わって挙動が変わる。アップデート後は再度テスト。

障害モード③ セッション内部の異常圧縮で請求が跳ねる

CASE 03

気づかないうちに「文脈圧縮」が短時間で何度も走って、その分課金される

AIとの会話が長くなると、内部で「文脈の圧縮(compaction)」という処理が走ります。過去のやり取りを要約して、短くまとめて保持する仕組み。これ自体は普通のことです。

ただ、この圧縮が異常な頻度で発火するバグがあります。本来は会話全体の使用率が高くなってから走る処理が、まだ余裕がある段階で連続で走る。しかも圧縮のたびに課金される。気づいたときには請求が跳ねている、という起こり方をします。

実際に起きた事例(原文引用)
「12分の間に3回連続で圧縮が発火した。
12:23:15 / 12:27:49 / 12:35:33出典: GitHub Issues - claude-code #76147
なぜ「AIの癖」を直しても防げないのか

これはAIが「圧縮しよう」と判断しているわけじゃありません。ツール本体の圧縮判定ロジックが、閾値の計算バグで過剰に発火してしまっている。あなたのプロンプトの書き方に関係なく、AIに何を頼んだかにも関係なく、起きます。

気づく側の負担が大きいのがこの障害モードの厄介なところ。使っている最中は「ちょっと遅いな」以外の症状がない。翌月の請求書で初めて気づく。

✅ 1人型起業家の自己対処法
  • 週1回、AIサービスの使用量ダッシュボードを見る癖をつける。異常な突出があれば、その日に何があったかを振り返る。
  • 「同じ話題で長時間セッションを引きずる」を避ける。用件が変わったら新しいセッションを開く。圧縮が走る回数自体を減らす。
  • 月次予算の上限アラートを設定する。予算の80%到達で通知を受け取る。異常な請求パターンに翌月まで気づかない状態を作らない。

まとめ — AIを直すんじゃなくて、外側に受け皿を作る

Session 3-4 でメインに扱うのは「AIエージェントの6つの慢性癖と、それを封じる3層の消えない容器」です。ここはAIとの向き合い方の話。

今回の副資料はその外側の話です。AIが何もしていない層で起きる事故があって、そこは「AIを賢く使う」という発想では届かない。

AIを直すんじゃない。外側に受け皿を作るんです。

受け皿の中身は3つだけ。

  • バックアップ:業務データはAIツール本体の中に置きっぱなしにしない。Google Drive / GitHub / Notion に一次コピー。
  • 安全装置の実機確認:hook設定しただけで安心せず、わざと発火させて動作テスト。
  • 使用量の定点観測:週1でダッシュボードを見て、月次予算にアラートを仕込む。

この3つが揃っていれば、今回の3障害モードのどれが起きても、事業が止まる規模には広がりません。あとは Session 3-4 でメインの「AI癖対策」と組み合わせれば、AIエージェント経営の下地は整います。