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AIの性能を決めているのは、
モデルそのものではなく、
その周りを固める道具立てである。
Who is this for
こういう方に、向けた話です
ハーネスエンジニアリング
AIモデル本体ではなく、その周りを整える技術。
あなたが今すぐ触れる急所だけを抜き出す。
Origin
ハーネスとは、もともと
馬に着ける道具立てのこと
手綱、鞍、蹄鉄、あぶみ。
馬そのものではなく、馬をどう走らせるかを決める周辺装備

高い馬を買ってきても、手綱の握り方と馬具の据え方が下手なら、走らない。
AIエージェントに乗り換えた時に、まったく同じことが起きている。
The core
AIモデル(LLM)は、実はこれだけ
テキストを入れると、テキストを返す関数
それ以上でも、それ以下でもない。
(LLM=大規模言語モデル。GPTやClaudeの中身)
「AIが自分で調べて、書いて、直してくれる」という体験は、
LLMの周りに乗せた道具立て、つまりハーネスが作り出している。
What is a harness
ハーネス=AIモデル以外の、全部
01
コンテキスト
AIが今読んでいる情報の全部。会話履歴・ルール書・過去のメモ。
02
ツール(道具)
ファイル読み書き・検索・シェル実行など、AIに使わせる腕。
03
入口のガード
怪しい入力・攻撃的な指示を止める関所。
04
出口のガード
危険な出力・やってはいけない操作を止める関所。
05
記憶
セッションをまたいで残す情報。忘れさせない仕組み。
06
監視
今どのツールで何をしているか、暴走していないかを見張る目。
Analogy
エレキギターと、アンプ
ギター本体(=AIモデル)を高いのに買い替えても、
アンプの設定――音量、音色、ひずみ、リバーブ――が下手なら、良い音は出ない。

ハーネスエンジニアリングとは、アンプのつまみを回す仕事のこと。
ジャンルによって、場面によって、正解のつまみ位置は変わる。
「唯一のベストプラクティス」は、存在しない。
Two perspectives
作る人と、使う人で、見え方が違う
Builder
作る人(エージェント開発者)
ハーネス全体を設計する。エージェントの動く土台そのもの――ループの回し方、ツール一式、通信の仕組み――を組む。エンジニアの領域。
User
使う人(Claude Codeのユーザー)
土台は既にある。触れるのはカスタマイズ領域だけ。設定・ルール書・スキル・記憶。あなたと私はこちら。
使う人の主戦場は、実はコンテキストをどう組み立てるかにほぼ集約される。
Five levers
使う人が、今すぐ触れる5つのつまみ
Lever 01
CLAUDE.md(家訓)
プロジェクトのルール・禁止事項をまとめた文書。AIが会話の前に必ず読む。
Lever 02
フック(関所)
「この場面では必ずこれをやれ」を仕込む釘。(hook)
Lever 03
履歴圧縮
会話が長くなったら要点だけに畳む機能。折るタイミングを自分で決められる。(compaction)
Lever 04
砂場(隔離環境)
AIが暴れても外に被害が出ない、区切られた作業場所。(sandbox)
Lever 05
権限設定
「この命令はやっていい/これは要確認/これは絶対禁止」の3段階。(permission)
Lever 06+
分岐(ブランチ)
今の会話履歴のまま、別の仕事に枝分かれさせる。片方は残す。
Lever 01
CLAUDE.md は、事業の家訓
CLAUDE.md は、事業の家訓。事業の家訓は、憲法。

毎回の会話の冒頭で、AIが必ず読む文書。

ここに「うちの事業ではこう呼ぶ」「これは絶対に書かない」「参考にする資料はここ」と書いておくと、
セッションごとに一から説明し直さなくて済む。

新人が入社した時に渡す就業規則+業務マニュアル+顧客対応の口調ルール
それを1枚のファイルに落としたようなもの。
Webコンサル業務なら、まずここに顧客の呼び方・提案書の型・使わない業界用語のリストを書く。
Lever 02
フックは、事務所の関所
「この場面では、必ずこの手続きを通せ」を機械に仕込む仕組み。
(技術用語では hook。AI業界だけでなく、昔からプログラム界隈で使われてきた言葉)

たとえばこんな使い方――
プロンプトの中で「〜してくださいね」とお願いする代わりに、必ずそこを通る通り道に釘を打つ
プロンプトは忘れられるが、フックは忘れられない。
Big picture
ハーネスの全体像
人間
入口の関所
コンテキスト
AIモデル
出口の関所
結果
そしてこの流れのに、ツール一式・記憶・監視、
そして必要ならもう一人のAI(サブエージェント)が控えている。

全部つないだ絵の総称が「ハーネス」。
Analogy 2
パソコンの中に例えると
I
AIモデル
計算する頭。
いわばCPU。
Claude Opus / GPT等。
II
コンテキスト
今開いている作業机の広さ。
いわばメモリ(RAM)。
会話履歴・ルール書・過去メモ。
III
ハーネス
CPUとメモリを繋いで動かす
OS(基本ソフト)。
Claude Code / Cursor 等。
Windows 上でも同じCPUで動くソフトの快適さがまるで違うように、
ハーネスが変わればAIの性能はガラッと変わる。
「モデルの性能」は、ハーネスに依存する。
Discipline
作り込みすぎるな。軽く。
Manus(有名なAIエージェント)は、半年で5回、ハーネスを根本的に組み直している。
LangChainのディープリサーチ版は、1年で3回、まるごと作り直している。

モデルが新しくなるたびに、うまく動くハーネスの形も変わる。
今日の最強は、3ヶ月後には最強ではない。
だから、作り込みすぎない。いつでも捨てて組み直せる軽さを残す。
――業務マニュアルの世界と、まったく同じ話。
Small change, big result
「行番号を振っただけ」で、10倍
ある実験――AIにコードを直させる時、各行に短い印(数文字のタグ)を付けておいて、
「この印の行を直して」と指示できるようにしただけで、
同じAIモデルの成績が最大10倍に伸びた。

モデルを取り替えたわけではない。
ハーネスの「指し示し方」を変えただけ。
Webコンサル業務でも同じ。
顧客の資料の各段落に番号を振って渡すだけで、AIの返答の精度が変わる可能性は高い。
Loop engineering
人がプロンプトを毎回打つ時代の、終わり
今までは、こう。
「これやって」→ AIが返す → 「じゃあ次はこれ」→ AIが返す → …

これから求められるのは、こう。
機械がプロンプトを送り続けるループを、あなたが設計する。

Claude Code開発者の言葉――
「私の仕事は、今やプロンプトを書くことではない。ループを書くことである。」
Two loops
内側のループと、外側のループ
Inner
内側のループ(作業ループ)
「1つの仕事」を完了するまでAIが自分で繰り返す輪。実行役のAIと、判定役の別のAIを分けるのが要点。実行役に「これで終わったか?」を自分で判定させると、たいてい甘い判定を出す。
Outer
外側のループ(起動ループ)
「そもそもいつAIを起動するか」の輪。定期実行、メール到着、顧客の問い合わせ着信――何をきっかけにAIに仕事を渡すか。ここを組めると、あなたが寝ている間もAIが動く。
判定役を分ける――これは、営業に見積を検算させないのと同じ理屈。
自分の仕事を自分で「OK」と言う人は、いつだって甘い。
The next horizon
AIがハーネスを、自分で作る時代
2026年に出た論文――Meta-Harness
Claude Code が、既存のハーネスを参照して、新しいハーネスを設計・評価・改善するループを回す。

その結果、既存の人手のハーネスを性能で上回り、訓練で使わなかったデータにも、別のAIモデルにも通用した。

論文が言った要点は、たった1つ――
過去に何をやってどう失敗したかの「生の記録」に、AIが直接触れられるようにすること。
要約を渡してもダメ。生の履歴が要る。
人間の側でも、まったく同じ。
失敗の要約ではなく、失敗した瞬間の生の会話を、AIに渡し続けなさい。
Tomorrow
明日から、この3つだけ
I
CLAUDE.md を書く
「事業の家訓」を1枚。呼び方・禁止事項・参考資料の在り処。長くていい。10分で第1版。
II
禁止だけ、フックにする
「これは絶対やるな」を1つだけ、通り道の関所として仕込む。プロンプトでお願いするより確実。
III
完了条件を、先に決める
「何をもって終わりとするか」を、AIに走らせる前に紙に書く。ここが甘いと、いくらループを回しても甘い成果しか出ない。
どれも、AIの新機能を待つ必要がない。今日、あなたの手で始められる。
AIモデル本体ではなく、
その周りを整える技術
ハーネスエンジニアリング。
速いAIが欲しいのではない。
自分の事業に、正しく走るAIが欲しい。